【2023年2月】読み終わった本とか

 

ビジネス書

江崎貴裕『数理モデル思考で紐解く RULE DESIGN』

人間の不合理性(全体最適部分最適は一致しない)を念頭において正負両方のインセンティブ設計をしなきゃねみたいなことは常から意識しているけど、ルールへのフィードバックプロセスの設計はそういえばあまり考えたことなかったかもしれない。

副題にある「数理モデル思考」はよくわからなかった。行動経済学的な切り口の本なので必然的に数字は出てくるけど、それを「数理モデル思考」と呼ぶものなのかはなんとも。

 

安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』

仕事柄、この領域には一家言あるが、この本は自分とすごく"流派"が似ている部分があって良かった(安心した)。これから転職活動する人にもおすすめできそう。なにか一冊読むとなったら本書か細井智彦『転職面接突破法』ではないだろうか。

 

中谷一郎『オペレーション科学: 努力に逃げない「これからの組織」を作る』

現職が結構オペレーショナルエクセレンスを追究することの価値が高い業界なので読んだ。社内システムにヒートマップツールとかいれたいですなあ。クエリログの分析(メモ)。最高に合理的な業務環境を整備したい。(あわせて山口芳夫『サイゼリヤ革命 世界中どこにもない"本物"のレストランチェーン誕生秘話』を読むと高まる。再読しようか。)

 

西口一希『顧客起点の経営 企業の「成長の壁」を突破する改革』

シンプルに何かしらのヒントを得たくて読んだ。書かれていることにはなにひとつ異論はないが、自分の業務内容と直結させるにはもう少し本書を読み返す、あるいは周辺図書を読んでtipsを集める必要がありそう。

 

小説

フランシス・ハーディング『カッコーの歌』(児玉敦子 訳)

『嘘の木』があまりにも良すぎて、読了後すぐに買って読んだ。こちらは全面的にファンタジーだけど、「じぶん」というテーマはどうやら共通。多様なアイデンティティへの暖かな許容(時に後押し)が読んでいてうれしい。

それはそれとして『嘘の木』は大傑作。自分の中のベスト10が久々に塗り替えられる感覚があった。宮部みゆき先生が書評「終盤の母娘の会話に、私は涙してしまいました」と書いているのだけど、本当に終盤の母娘の会話が素晴らしいのです。

 

芦花公園『異端の祝祭』

めちゃくちゃ好みでびっっくりした。現実の宗教とリンクしたホラーというか、

・人間の軽率な行動で日常が
・上位存在(≒神々)の世界と接続されてしまい
・取り返しのつかないことになる

みたいなジャンルが私は大好き…。

 

芦花公園『漆黒の慕情』

前作が刺さったので続刊も立て続けに読んだ。『異端の祝祭』よりは等身大感(?)のあるストーリーだったけど何はなくともキャラがいい、「非凡な探偵&凡人のワトソン」のバディ物と見せかけてワトソンの方が歪んでる関係性も私は大好き……

 

芦花公園『聖者の落角』

探偵役のモノローグから開幕、全体的に冒頭が不穏すぎる…モノローグが解禁された探偵は必ず死ぬので…(不正確)。片山敏彦の自己肯定感が開花して世界一美しい顔のおもしれー男になっている、片山敏彦!!!

読んで以降、定期的に片山敏彦のことを思い出してしまう。顔の良さだけで怪異を弱体化させる(※)一般人男性面白すぎる、顔の良さだけで異常世界をサバイブする男……。

※顔が良過ぎるので素顔を晒すだけで信仰が集まり怪異への畏れが弱体化する(は?)

 

その他(趣味)

藤田統三『パフェの発想と組み立て』

パフェ大好き、2023年は自作パフェを趣味にしたいくらいの水準で大好き。カクテルとかよりコンセプチュアルに組み立てられそうで楽しいと思われる。読んで考えたけど、パフェってつまるところ食感と甘味酸味と見栄えのパラメータのバランスを取る芸術であると思うので意外とベクトルで表現しやすいのでは。調理工程がないことが多い(要素の組み合わせ)のでプロットしやすいというか。

 

熊野純彦『西洋哲学史 近代から現代へ』

前巻の『西洋哲学史 古代から中世へ』に続けて読んだ。

下巻、カント以降からマジで難易度が一線を超えてきて後半かなり飛ばし読みになってしまった。ドイツ観念論の基礎を押さえてリベンジしないと…。シリーズ前巻も読んでわかったのは、アリストテレスデカルト・カントが色々ややこしくしてるということ…。逆に考えれば、アリストテレスデカルトとカントの思想から展開して哲学の大きな流れを押さえるというのはアリなのではないか。いつかリベンジする。

 

宮地正人 編『日本史 (新版 世界各国史 1) 』

おなじみ山川出版社より、日本史教科書ハードモードみたいな本。デカい。受験生の頃は全く気づかなかったけど1840年以降くらいから、日本の歴史って面白すぎる。学校とかで教えたほうがいいんじゃないか。

200年以上の鎖国によって国内政治がゆっくり先例重視・儀式重視になっていたところに西欧が東アジアで植民地政治を始めて危機感を持つところ、要は世界的な帝国主義の潮流に巻き込まれるところから日本の国際化は出発するわけだが、その後200年弱の国内政治の流れを追ってみても、そこから果たして民族としてどの程度進歩したのかというのは……どうなんだろうな。